第7章 敵の的
偶然名前が同じではない。現場の写真の内装も同じだった。
(何でアイツはこんな記事を…?)
本人に聞いて見たいところだが今は、
「……」
承太郎は窓を垣間見てから部屋を出た。
(……行ったか?)
ガチャリ
窓の外から、ずぶ濡れになった由来が出てきた。
ポタ ポタ
部屋の床が体を伝う水滴で滲んだ。
部屋に常備されているタオル2枚で頭と体全体と床を拭いた。
ブルブルブル
(寒い…)
アヴドゥルさんは羨ましいな。人間、体を暖めた方が健康だから。
何て考えながら、取りあえずシャワーを浴びて体を温めて、次に濡れた服を冷風で乾かして着た。
これを大体15分で終わらせた。
(まさか、“あの人”(承太郎)が様子を見に来るとは…)
最初は、いつかの偽者かと思って、つい外から様子見してしまった。
でもあれは本物だった。
あの人は人一倍勘が鋭い。
何をするにしても、必ず意味があるというか、動きに無駄がない印象がある。
私の部屋に来たのも、もしかして私のスタンドのことを察してなのかと思った。
ベッドの上の新聞紙を眺めた。
(これ以上、被害を出すわけにはいかない…)
由来は部屋から出た。
「雨にうたれながら忍者みてえに壁に張り付いて、トレーニングか?」
「!!」
ドアのすぐそばに、承太郎が壁に寄っ掛かって待っていた。
「うわっ!」
驚いて後ろに倒れそうになったが、承太郎が腕を掴んで止めてくれ、お礼を言った。
「ど、どうやって分かったの?」
「スタープラチナで、窓の外の雨粒の反射を利用して、お前がホテルの壁に張り付いていたのを見ただけだ」
「!」
スタープラチナは、顕微鏡並みの精密な視力を持つ。
しかし、雨粒に写ったものを見るなんて。鏡とは全然違うのに。
「さ、流石だね」
完璧超人とは、まさにこんな人のことを言うんだろうな。
「迎えに来てくれたのなら、待たせてごめんなさい。じゃあ下に行こう」
しかし、承太郎が私の腕を未だに掴んだままだった。
香港沖で船に乗っていた時、敵から庇ってくれた時と同じみたいに。
「あの、そろそろ離し…」
「何でこんなに冷てえんだ?」
!!