第7章 敵の的
「つまりジョジョ。様子を見に行ったってことですか?」
花京院は承太郎との付き合いはまだ長くなく、彼の行動を不思議に思った。
「恐らくそうじゃな。承太郎が由来の体調不良に一番に早く気付いたのなら、アイツが適役ということか」
承太郎は一見冷たいようであるが、妙なところで親切だ。
「さすがワシの孫。女の子相手でも躊躇せず会いに行くとは。朝飯前か」
「ジョースターさん。今は朝飯中ですよ」
由来の部屋の前にて、
承太郎は部屋を3度ほどノックをした。
がしかし、向こうからの反応が全くない。
「寝てんのか?」
ドアノブに手をかけ、ようやくことの異常さに気付いた。
金属でできたドアノブが、やけに冷たかった。
ドアノブを下げて全体重をかけて開けようとしても、びくともしない。
「“星の白金”(スタープラチナ)!」
ドゴンッ!
スタンドのパワーで体当たりして無理やりこじ開けた。
「これはッ!」
部屋の内側から見て、ドアが頑固だった理由がようやく分かった。
ドアが周りの壁ごと凍っていたのだった。
(“奴のスタンド”(ホワイトシャドウ)か!だがなぜこんなことを?敵の襲撃の用心に越したことはねえってことか)
部屋を見渡したが、彼女がいる気配がない。
どしゃ降りで窓の外がよく見えず、スタープラチナの目をこらした。
(ん?)
ベッドのそばのテーブルの上に新聞紙が置いてあることに気付いた。
恐らく昨日由来がロビーで買ったやつだ。
承太郎はスタープラチナで新聞を速読した。
英語ではあるが、母親のホリィはイギリス系アメリカ人であるため、その影響で大体は読めるのだ。
小さい頃から日常的に、母から英語を教わっていたのだ。
「これは…!」
ある記事に注目した。
赤線で引かれてあったため、何だろうと興味本位で読んでみた。
列車内で変死体が発見されたという物騒な事件。
被害者の荷物が消えていることから、窃盗によるものだと警察は断定した。
一見ただの殺人事件であるが、問題が
・・・・・・・
その列車の名前だった。
(俺たちが、シンガポール駅から乗った列車じゃあねえか!)