第7章 敵の的
翌日の午前。
雨は予想以上にひどかった。なのでジョースター一行は、出発を遅らせるのを余儀なくされた。
今は、豪華なホテルで朝食をとっていた。
窓の外から響く大きな雨音で、眠気がさめるような感じだ。
だがそれ以上に、
「結局戻ってこなかったな」
ポルナレフは未だに戻ってきてない。
皆、ポルナレフのためにとっておいた席を寂しそうに眺めた。
しかし、空席は他にもあった。
「由来、まだ来ませんね」
マイペースポルナレフとは違う彼女が、未だに来ていなかった。
「寝坊でしょうか?」
「いいえ違います。どうやら食欲はないとかで、部屋にまだいるみたいです」
アヴドゥルの質問に花京院が答えた。
朝、由来を迎えに行ったところ、彼女はドアを半開きにしてそう答えたのだ。
ちなみに、ダイエットする必要もないくらい、彼女は至って平均体型なのは、皆知っていた。
「だが少しくらい食べておかないと、敵に襲われたとき動けなくなるぞ」
「僕もそう言ったのですが……やっぱり、ジョジョの言う通り、体調が優れないのだろうか。昨日はあんな楽しそうに演奏していたのに」
「……」
このダイニングルームの端には、ピアノがあった。
昨日のレストランにあったものより、上等できれいに磨かれたものが。
もし彼女がいれば、そこでまた喜んで演奏していたかもしれない。
ご期待に応えて、ジャズを弾いていたかもしれない。
そんなことを想像してしまうと、余計ブルーな気持ちになってしまう。
おかげで今日のモーニングは、あまりよい空気ではない。
こんな命がけの旅だからこそ、笑えるときは笑い、嬉しいときは喜ぶべきなのだ。
そうでもしなければ身が持たなくなる。
「朝飯が終わったら、また声でもかけておこう」
本当に調子が悪ければ、SW財団の医師を呼ぶこともできる。
ジョセフがそう言ったちょうど、承太郎がコーヒーを飲み終えて、席を立った。
「ん?どこへ行くんじゃ?」
「俺は朝食は終わった」
それだけ答えて、皆と食後の雑談をする気もなく行ってしまった。
(今ジョジョ、早く朝食を終えるために、コーヒーを一気飲みした。それにジョジョが向かった先は、自分の部屋じゃあない。由来の部屋だ)