第6章 忍び寄る“影”(敵)
「ジョースターさんたちはもう寝たらしいから、私ももう寝ることにするよ。それにポルナレフさんが抜けてしまったから、何だが嫌な予感がして」
「…明日、敵が襲ってくると言いたいのかい?」
「……その可能性は高いと思う。「寝ては戦はできん」て言うし、2人もあまり夜更かしはしない方がいいと思うよ」
「それ、「腹が減っては戦はできん」の間違いじゃないかい?しかも寝ちゃダメなの?」
彼女にとって、2人は同じ高校生で同世代だから比較的会話はしやすいとは思っていた。
だがやはり、自分から話かけるのはどうも苦手で、ましてや部屋で3人だけでトランプをやるのも気が進まない。
(それを考えたら、先日のホテルのロビーで2人きりでベンチで話せたのは奇跡…だったのかな?)
承太郎も私と同じ、自分から話を持ちかけるタイプではないから、それであまり気を遣わずに済んだのかな?
何て考えながら、由来は2人を横切った。
「体調の方はどうなんだ?」
“!”
ピタッ
急に承太郎が話を持ちかけてきて、つい足を止めてしまった。
話が見えない花京院は首を傾げて、頭の上に「?」を浮かべた。
「えっと、何で?」
「列車にいたときも、あまり顔が優れなかっただろ?」
この時、由来だけでなく花京院も驚いた。
承太郎が他人の心配をしていることを。それも、列車に乗っていたときから彼女を気にかけていたのだ。
「だ、大丈夫。体調を万全にするためにも、もう寝るから」
新聞を胸に抱えて、小走りで自分の部屋に向かった。
「…君、何で僕が彼女と会話した時のように、正面から言わず、背を向けた状態であんなこと言ったんだい?心配するなら、普通顔見て言った方が、相手も喜ぶんじゃあないのかい?」
花京院は承太郎よりも、人との付き合い方に詳しいらしい。
花京院の問いに対し、承太郎はすぐに言葉を返すことなく、帽子を深くかぶった。
「さあ何でだろうな?正面から言うのは何か気が進まん」
この時、花京院典明は思った。
承太郎はうるさい女がいると怒ったり怒鳴ったりするが、実は意外とシャイな一面があるんじゃないかと。
(やっぱりどうも、そういうところが彼女と似てんだな…)