第6章 忍び寄る“影”(敵)
「…とにかく、由来本人に絶対に言うな。もちろん他の仲間にもじゃ。あと、感情的になってすまなかったのう」
「い、いえ。こちらこそです。明日も早いですし、今日は早めに寝ましょう」
アヴドゥルとジョセフは、承太郎たち含める高校生組より早めに就寝することにした。
どうやら年上組は、若者のように夜は強いわけではないらしい。
ジョセフはすぐには寝付けず、ふかふかのまくらの上で由来のことを考えた。
(由来がDIOの手下なんてことは、絶対にあり得ん…あんな純粋で優しい子が……)
ベッドのコーラのシミの匂いがして、鼻をすすった。
ワシのハーミットパープルなら調べられないことはないが……
たとえそうだとしても、きっと並々ならぬ事情があるんじゃ。
大事な人を人質にされて、無理矢理仲間にされたということも考えられる。
エリナお婆ちゃんによれば、DIOは冷酷残忍で野心の強い男だ。
人の弱みに漬け込み、簡単に心を操るカリスマ性もある。
かつて花京院とポルナレフがやられたように…
(信頼しているからこそ、明日直接聞いてみよう。彼女なら分かってくれるはずじゃ…)
廊下にて、
ゲームについて熱く語っている花京院に、それを静かに聞いている承太郎。
2人は横に並んで歩いていた。
「ジョジョ。君ゲームとかあまりやらないのかい?」
「そもそも家にゲーム機ねえからな」
「そうなのか。じゃあ休日は普段何してるんだい?」
「ラジオをよく聞く。千代の富士とかな」
(意外!それはお相撲さんッ!!)
仲良くなったばかりの男子高校生の会話の序盤のように、趣味について語り合っていた。
いや、承太郎はほとんど聞き手であまり話に意欲的ではない。
反対方向から女子高生の由来が歩いてきた。
「やあ兎神。まだ起きていたのかい?」
「ホテル内の散歩。まあ気分転換だよ」
彼女の手には新聞が。ロビーから取ってきた物のようだ。
「英語の新聞か。読めるなんて凄いな」
「気分転換だよ」
「じゃあ気分転換で、部屋で承太郎と3人で一緒にトランプでもしないかい。2人じゃババヌキもできないからさ」
「いや、止めとく」
そこは気分転換じゃなかった。