第6章 忍び寄る“影”(敵)
「そうじゃ。アヴドゥルはスタンド使いに関しての噂は多く耳にするんじゃろう。何か奇妙なスタンド使いの噂は聞かんのか?今後の対策に使えるかもしれんからの」
この世界には多くのスタンド使いがいる。
DIOはそれらを金や自身のカリスマで手中に収めている可能性もある。
「……その事なのですが」
「?」
アヴドゥルには、心当たりがあった。
「思い出したのです。旅烏と言われたスタンド使いが」
「旅烏?」
つまり、決まった場所で住むことなく旅歩く者のことだ。
「これは本当に噂なのですが、“血に飢えた獣スタンドとその使い手がいる”と聞いたことがあります。その者に立ち向かって、帰ってきたものはいないと……」
一時期、この話はスタンド使いの間でも有名だった。
いや、スタンド使いではない一般の人々の間でも。まるで、ネッシーや人魚のような都市伝説のように人々に語られていた。
しかし2年前に、その噂は風のように自然に消滅した。
「アヴドゥルは、その獣のスタンド使いは、DIOの手下になっていると言いたいのか?」
「いえ、そうではなく…由来のことです」
「!!」
確か由来のスタンドは…
「アヴドゥル……お前まさか!由来を疑っているのか?!」
「……」
アヴドゥルは黙り込んで、否定はしなかった。
ジョセフは左の義手でつい、持っていた紙コップのコーラをグシャリと握りつぶした。
ベッドのシーツの染みになった。
「お前も知っとるはずじゃろ!彼女が今までどれだけ我々の支えになってくれたか。そんな彼女の良心よりも、お前は他の者の言うことを信じるのか?」
『受けた恩は必ず返す…ホリィさんを救いたい』
日本にいたときも、承太郎を助けてくれた挙げ句、ホリィを看病してくれた。
ワシの家族を助けてくれた。彼女は仲間であり恩がある大切な存在じゃ。
「いくらお前の情報通が頼れても、彼女は決してそんなことはしない!」
「そ、そうですよね。口から出まかせのことを言ってすいません。ただもう1つだけ言わせてください。
実は初めて彼女のスタンドを目にしたときから、その噂が頭をよぎっていたのです。私もそうですが、動物の姿の“スタンド”を、彼女に会うまで見たことがなかったのです。イギーやストレングスのような、動物の“スタンド使い”はいますが」