第6章 忍び寄る“影”(敵)
「“スタンドを奪われる”、じゃと?」
うちの孫は一体なぜそんなことを聞いたのか。
スタンドとは、“そば”に現れ立つという意味から名付けられている。
それを切り離されたらどうなるのか。
ワシでもそんなこと、考えたことないわい。
「誰かから聞いたかは分かりませんが、承太郎がそんなことを思うことを、私は不思議に思いました。わざわざ部屋に呼び出されましたし」
呼び出された?つまり、誰かに聞かれるのを防ぐためにやったのか?
一体誰に…
「ホリィさんのように、スタンドが発現したことで危篤状態に陥るケースは、見たことがあります。しかし…残念ながら、その前例は聞いたことがありません」
やはり、あのスタンド情報通のアヴドゥルでさえ知らないことなのか。
「それで、承太郎には何と答えたのだ?」
アヴドゥルは思い詰めたような表情に変わった。
「ジョースターさんもご存知の通り、スタンドとは本人の精神力から作られるビジョンです。この道理なら、本体が死ねばスタンドが消えるのは当然のこと」
「うむ」
「ですがその逆。もしスタンドを奪う能力を持つスタンド使いによって、奪われたらどうなるのか。魔術師として、スタンド使いとしての私の、あくまで推測なのですが……」
アヴドゥルは、承太郎に伝えたことをそのままジョセフに教えた。
「『ただでは済まないだろう』と言いました」
「!。それはどういうことじゃ?」
「例えばの話ですが、風船を持った子どもが誤って手放してしまったら、子どもはショックになり泣くのが大半でしょう。
つまり、持っていたものを失うことは、本人にそれなりの負荷がかかると私は考えています」
続けてアヴドゥルは深刻そうに言った。
「それも、体の一部も同等であるスタンド。普段持っているものが空になれば、恐らく……死よりも恐ろしいことが、起きるかもしれません」
ジョセフは冷や汗が出ていた。
あくまで想像でも、決してあり得ない話ではなかったから。
今まで、自分たちの想像を遙かに越えるスタンドを見てきた。
今はまだインドで、エジプトまではまだまだ先だ。
つまり、この先も今まで以上に恐ろしい敵に会う可能性が高いのだ。
承太郎が言ったような、スタンドを奪うスタンド使いも、いるかもしれない。