第6章 忍び寄る“影”(敵)
彼女かフレンドリーなポルナレフのことを少し苦手意識していたことを、ジョセフやアヴドゥルは知っていた。
話しかけられても、いつも落ち着かない様子でいた。
でも今の由来の表情は真剣そのもの。
苦手だったとしても、彼の明るさや優しさをよく見てきて理解していて、彼のことを真剣に考えている。
そんな彼女の誠実さに、2人は改めて感心した。
「そういえば、ポルナレフだけお前さんのピアノを聴けなかったな」
あの時確かポルナレフはお手洗いにいた。
「あんな披露してくれたのに、私が始めた騒ぎのせいで。すまなかった」
「アヴドゥルさんが謝ることではありませんよ」
「だが、君の演奏はとても素晴らしかった。これは占い師の勘だが、人の心を浄化させるというか、実にたまげた」
「ポルナレフにも聞いてほしかったじゃろう。残念じゃったな」
「ええ…そうですね」
「また今度、機会があったら聞きたいものだな」
ジョセフとアヴドゥルは笑いながらそう彼女のことを褒め称えた。
「ありがとうございます」
しかし、彼女はジョセフたちにつられて笑うこともなく淡々とお礼を言った。
さっきは真剣な彼女を褒め称えが、こんな会話のなかでもいまだに真剣でいるから、微妙な雰囲気になってしまった。
「…ずっと前から気になっていたのじゃが、君はあまり笑わないが、何か理由でもあるのか?」
「……慣れてないだけですよ。アナタたちのような、ユーモアある方々に」
そう言ってごまかしたが、ジョセフたちは知らなかった。
彼女は笑わないのではなく、笑えないのだ。
この2年間、度々起こるめまいや月経が来ないなどの体調不良で、笑う気力が失われていた。
全ての元凶である2年前、両腕にかけられた敵スタンドの呪いが、彼女の体を今でも蝕んでいた。
「…失礼しました」
彼女と入れ替わるように、アヴドゥルは部屋に戻ってきた。
「アヴドゥル。帰ってくるのが遅かったな」
「ええ。承太郎にものすごく奇妙な質問をされましてな」
「奇妙な質問?」
あの承太郎がアヴドゥルに直接聞きに行ったとは、一体どんな大事なようだったのか。
(ギヒヒッ。まさか占い師のアヴドゥルに、明日の運勢でも占ってもらったのか。意外と信心深いのかのう…)
「「スタンドを奪われたスタンド使いはどうなる?」と聞かれました」