第6章 忍び寄る“影”(敵)
「!」
承太郎がすぐ隣に来ていた。
「じじいたちが言うには、これから別の宿を探す。こんなとこで道草食ってるヒマはねえとよ」
「…分かった」
スタンドを引っ込めて、承太郎と共に野次馬を抜けた。
その後、ジョースター一行は、何とか宿をとることができたが、ほぼ満室だったため、部屋はまたバラバラになってしまった。
シンガポールの時と同じで、違うのは由来は一人部屋だ。
「私は一人になるのは、仕方ないことです。この旅に同行すると決めたときから把握してました」
由来はジョセフに呼び出されていた。
「ん~。そうじゃが、今更なんじゃがが、敵が夜に襲ってこん保証もないからのう」
もちろん、ジョセフは真剣な話をしていて、決して疚しい話をしているわけではない。
「優秀な助っ人がいるので、それは大丈夫です」
「え?誰じゃ?」
「“白の陰影”(ホワイトシャドウ)です」
2年前の事件がきっかけで、なかなか寝付けない日が続いたときがあった。
そこで、ホワイトシャドウのモフモフ毛皮を利用して、毛布代わりにすることがあった。
「ならいいが…スタンドが傷付けば本体も傷付くから、自分の体はもちろんスタンドも大事にするんじゃぞ」
「……はい」
由来は一礼して部屋の扉を開けると、アヴドゥルがちょうど扉の外にいた。
「ああ!いたのか」
彼女が部屋から出られるように、ドアの隅に寄った。
しかし彼女は部屋を出ず、アヴドゥルを見上げた。
「?。どうかしたのか?私に何か言いたいのか?」
「……」
何かを言いたそうにしているのは確かだ。
「実はポルナレフさんから、伝言を預かっています」
「!」
あの時、ポルナレフと喧嘩したアヴドゥルにこそ、聞いてほしいと由来は考えていた。
「…何と言ってたのだ?」
「『自分勝手で悪かった』と」
神妙な顔をしながら続けた。
「アヴドゥルさん。私があまり言えることではありませんが…ポルナレフさんをあまり責めないであげてほしいです…彼もきっと、アヴドゥルさんに…申し訳ないと思っていたはずですから…」