第6章 忍び寄る“影”(敵)
そして現在
由来はお目当ての宿の前に着いたが、あらぬ事態が起こっていた。
「え?何が…起こっているの?」
赤いライトを光らせているパトカー、何だ何だと寄ってくる野次馬たち。
宿の中で何か事件があったらしくて、現場は明らかに騒然としていた。
「由来!」
ひときわ背の高いジョセフが展望みたいに由来をすぐに見つけて、由来もまた背の高い目立った集団を見つけることができた。
「何があったんですか?」
「わしらが着いた時点でこの有様じゃ。どうやら殺人事件があったらしい…」
警察が話し合っているのを小耳にして、凶器や被害者の死因など言っていたことから、誰かが殺されたのだ。
由来は人ごみをくぐり抜けて、宿の中へと行った。
ジョセフたちとは違って比較的華奢な体格だったため、すんなりと通ることができた。
「おい。何しに行くんじゃ?」
ジョセフの声も耳に入らないくらいとっさに行ってしまった。
「彼女……たまに思い切った行動しますよね…」
花京院は苦笑いした。
「しかし、何故わざわざ無残な殺人現場に行ったのでしょう?我々には関与しないことなのに。見るとしても、惨い現場しか…」
アヴドゥルは不思議そうに異を唱えた。
私は野次馬の最前列に着いた。
ホワイトシャドウを使って、射程距離2mだけ宿の中に進めた。
そしてスタンドを通して、宿の中全体を透視した。
中央のソファーの上には、被害者と見られる女性が横たわっていた。
周りに予想以上の量の血が飛び散っている。鮮やかな赤いドレスにも。見たところ出血死だ。
顔は白い布で隠されている。
そして腕には、ナイフの切り傷が無数にあった。
出血死は、その傷によるもので間違いなさそうだ。
(犯人が被害者を殺すつもりだったら、なんで
・
腕を狙ったんだ?もっと、内臓や頭とか、確実に急所を狙うはず…)
そう気になって、ホワイトシャドウを被害者にもっと近付けた。
そこで思いも寄らないものを目にする。
切り傷と血で最初はよく見えなかったが、腕に妙な形をした“刺青”があった。
まるで“鎖のような形”をしたものが、確かに両腕に…
「う…そ…」
私は青ざめ…
「おい。何している?」