第6章 忍び寄る“影”(敵)
〈インドの町外れのとある荒野〉
ドドドドドド
夕陽が照らすロマンチックな景色を背景に、インド象を乗りこなす男がいた。
西部劇風の衣服を身にまとい、後ろにはインドの貴族のような衣装を着た女性も乗っていた。
男は女性を降ろして、友人に会うからと別れを告げた。
「わたしをあなたの妻にしてください」
「おめーバカな気はおこすなよ。まだ16じゃねーか」
「もう結婚はできます。愛しているのです」
女性はその男と別れるにはあまりにも辛すぎると言った。
ザッ
男は象から一旦降りて見下ろすのをやめ、女性に愛していることを伝える。
貴族の家柄である彼女のためを思い、愛しているからこそ結婚できないと優しくなだめた。
「でも時どき会ってこういう風に抱きしめてやるよ。おれはそれで幸せだぜ」
「はい」
男はロマンチックな舞台でロマンチックな別れを遂げた。
そんな見物を別の男が見ていて、ククククと笑った。
「盗み聞きたぁ趣味がよくねーぜ。
ケッ。あいかわらず回りくどいことやってると言いてえだろうがよ。あんな女が世界中にいるとよ、何かと利用できて便利なのよ。なんでもしてくれるぜ。命もおしくないって風にな………」
男はさっきまでの優しい眼差しとは豹変して、悪のようになった。
「おれのやり方はわかってるよな。J・ガイルのだんなよ」
ゴゴゴゴゴゴゴ
その男の両腕は右手だった。
「ところでだ。「シルバーチャリオッツ」のポルナレフだが、単独行動でおまえを探し回っているぜ。どうするね…?おめーがわざとおびき出しているのにひっかかりやがったな。やるのはヤツからか?」
西部劇風の男は、今度はJガイルとは別の方向に目を向けて急に話しかけるように声を出した。
「だがお前の獲物はうまく引っかからなかったらしいな。女1人も口説くこともできねえとは」
“……余計な口出しをするなホル・ホース。計画の許容内だから問題ない”
ホル・ホースの目先には人影がない。が、確かにそこから声が響いた。
「てめえは元々俺たちコンビとは関係ない奴だ。DIO様が俺たちにてめえを連れて行けと命じられたから、入れたんだ。少しは感謝してもらいたいねえ」