第6章 忍び寄る“影”(敵)
“ククククッ。さあ…どうだろうかなあ?”
敵の姿は見当たらず、まるで独り言みたいに話す自分が不思議だ。
しかし、下手に動かないようにした。
だるまさんが転んだような金縛り状態のままでいた。
大通りを行き交う人たちは、ずっと立ち止まっている私を不思議そうに見ている。
“私はその路地裏にいるぞ。以前のように、かかってこないのか?”
本体の居場所をバラすなんて、この声の主、2年前のあの男みたいに相当にイカレている。
「ジョースターさんから、これ以上の単独行動は許可されていない。アンタがどう挑発しようと、私は戦わない」
“なるほど…随分と飼い慣らされているな。お前は独りでいるからこそ、真価を発揮するのにな”
コイツ、私のことを把握している。
2年前のことも知っているってことは…
でもこの女の人の声は間違いなく、全くもって聞いたことがない他人だ。どういうことだ
“親切心で教えてやろう。DIO様はお前の行動は全てお見通しだ。2年前もあの方はちゃんと見ていたぞ”
何だって…? 直接見ていた?
“なら私が知っていてもおかしくはないだろう?ああ?”
相手がどんな顔をしているか見てみたい。
口調だけじゃなく、実際に相手の表情や仕草を見るだけで、どんな行動パターンを持って、思想を持っているかが分かるから。
そこから弱点もあぶり出すことも出来る。
この状況でやれることは、姿が見えない敵からなるべく情報を得ることだ。
「……ポルナレフさんにやった同じ手口で、私をおびき寄せるってことはつまり、アンタと両右手の男はグルってことかな?」
ビギィィッ!!
「!」
熱湯にでも入れたような痛みが腕にのしかかり、同時に倦怠感が襲った。
焦点が合わなくなり、視界がぼやける。
「…な…に……?」
“誰が質問していいと聞いた?立場が分かってないようだな”
立つのでさえ辛くなっていき、通りの縁にある壁に寄りかかった。
「ハァ…ハァ……」
呼吸を少しでも整えて腕の痛みを抑えた。
女の不気味なあざ笑い声が頭に響き、それが余計私の具合を狂わせた。
私のこのザマがそんなに楽しいか?
“やはり、その顔の方がお似合いだ
・・・・
さっきは気持ちよさそうに弾いていたが、お前にはあんな顔は似合わない”