第6章 忍び寄る“影”(敵)
化け物スタンドの仕業か?
そう思ってソイツの顔を見たが、薄気味悪い笑みをニヤニヤ浮かべているだけで何も話さない。
さっきまで意味不明の言葉を吐いていたくせに。
女性の足下には所持品とみられる財布やバッグがバラバラに落ちていた。
化け物スタンドに襲われたときにパニックになって落としたのだろう。
その中に身分証明書もあって、女性の名字は“汐華”だと分かった。
「汐華さん。取りあえずこの場所を出ましょう」
「大丈夫か!」
『!』
路地裏の奥から、さっきまで一緒に気絶していた男が来た。
私と化け物スタンドが戦っている間、気がついて遠くに隠れていたのか。
「あ、アナタ!無事だったのね!」
どうやらその人が彼氏で間違いない。
「無事で良かったわ…」
「ああ。君の方も。君は僕の願いそのものだもの」
私がいることもお構いなしに、感動の再会にハグをし合った。
しかし、どうやって気絶した状態からあんな場所まで?
ドクンッ!
(え?)
私は見逃さなかった。
男は女性とハグしながら、一般人に見えないはずの化け物スタンドと私のホワイトシャドウを確認するように見たのだ!
そして女の背中で化け物スタンドをちらつかせていた。
(え!何で、敵スタンドは確かに…!)
私は振り向いたが、残っていたのは氷と引きちぎった右腕だけだった。
(腕を取って自由に…!?)
アイツは被害者なんかじゃあない!
本体はあの男だ!
「その男から離れ…!」
女性をすぐに男から引き離そうと、目の前だけに集中した。
・・・・・・・・
しかし、そこが仇となった。
「間抜ケガ…」
隣の壁に、別のスタンドが張り付いていたのだ。
(嘘…!敵は……)
「遅カッタナ…由来」
ガッ!
一瞬の出来事だった。
そのスタンドの姿すら見えなかった。
覚えているのは、その2人目のスタンドに頭を触れられたこと。
そして、私の目の前は、氷の銀世界から真っ黒に変わってしまった…
~~
スタンドはあの時
・・
2体いた。
その内の1体の本体の顔は、何とか覚えている。
ただ、もう1人の方は分からない。
今私の頭に直接話しかけている奴は…
「…単刀直入に聞く。私から“記憶”と“スタンド”を奪ったスタンド使いは……アンタなの?」