第6章 忍び寄る“影”(敵)
由来は思った。
今ホワイトシャドウを使って、ポルナレフさんを無理にでも止めるのは、できなくない
それか、ポルナレフさんについて行って、その隙をついて気絶させてジョースターさんのところへ連れて行くことも、できなくはない
だけどそれじゃ、私の信条に反する
スタンドとは守護霊のようなもの
“その使い手や仲間を敵から守るためにあるのであって、仲間を傷付けるためのものじゃあない”
由来の目には、迷いの色が全くもってない。
「そうかい。お前も、目当ての男が見つかるといいな」
ポルナレフはそれだけ言い残してとうとう、由来の前から姿を消した。
「……」
(結局、何も…できなかったか…)
ここまで来て、言いたいことは言ったけど、何も変わらなかった
元々、分かっていたことじゃあないか
私は人を説得させることなんてできない
人と話すのも得意じゃない奴が、イキがったってところだ
「無力だ…」
車と人の話し声が混じり合う雑音が響く中を通って、彼女は引き返した。
インドの街の活気があるだけで、少しは落ち込まずに済んだ。
子供が元気に走りまわる姿を見て、不意にさっきの少女のことを思い出してしまった。
(あの子、大丈夫かな…)
“何故、引き受けなかった?”
「!!」
突如、頭の中に声が響いた。
反射的にスタンドを出して辺りを見渡したが、声の主らしき人物はいない。
“引き受けた方が、お前たちにも、
・・・
私たちにも好都合だったが。鈍いポルナレフなら、お前を出し抜くことだってできた…”
「誰だ?」
聞いたことない。女の人の声だ。
私は不審な人物を探すために、必死に辺りを見渡した。
行き交うインド人、無邪気な子どもたち、排気ガスを出す車、狭い路地裏、その中で這い蹲っている貧困層…
・・・
(路地裏…?)
全身に忌まわしい記憶と感覚が駆け巡った。
『よく考えるんだな…一般人はおろか自身のスタンドでさえ守れなかった己の弱さを』
『やめろ!!!』
ホワイトシャドウは、うなり声をあげて威嚇した。
「バカな…そんなことが……」
“私が話しかけるまでこの気配に気付かないとは。ポルナレフよりも落ち度があるのではないか?”