第6章 忍び寄る“影”(敵)
ポルナレフはさっき、アヴドゥルに対し癇癪を起こした割には、彼女の話を静かに聞いていた。
相手が女性だから紳士ぶっているのか、彼女にかけられた優しさが伝わったのか。
もしかして改心してくれるかもと期待しながら、出来る限り話した。
「しかも、肉の芽で操られていたとしても、一度アナタを手駒にしたDIOは、当然アナタの能力と弱点を把握しています。そして、DIOが差し向けるスタンド使いも、そこを突いてくるはずです」
「つまりィ、かいつまむとこうか?「行くな」って言ってんのか?」
「…私はアナタの進む道を阻む気はありません。ただ、時期を待つべきです。今は敵の出方を見るべきです」
普段はこんなに話すことがなく、少し息を切らせて喉が筋肉痛になったような気がした。
「……お前の言いたいことは分かった。そして、俺の答えはNOだ」
由来に背を向けることで、後戻りしないことを強調した。
「時期を待って敵を逃したら元も子もない。それこそ本末転倒だ。
それに、目的が違うなら、いつかは分断するのが自然の摂理ってもんだよ。甲子園目指す奴と部活をただ楽しみたい奴じゃ、同じグラウンドには立てねえみてえによ」
「…そうですか」
ポルナレフは改心するつもりは全くない。
その背中からは強い戦意と覚悟を感じ、彼女に彼をこれ以上引き止めることなんて出来なかった。
(アヴドゥルさんだったら、さっきみたいに殴って意地でも止めるかもしれないな…)
「ならてめーも来るか?」
「!」
由来も人捜しをしているなら、やることも一緒だ。
彼女となら、行動を共にしても良いとポルナレフは考えた。
もちろん、女たらしとかではなく、2人で行動することで効率を良くして、目的に近づくために。
「どうしても会わなきゃならねえ奴がいんなら、行動しなきゃ何も始まらねえだろ?なら、俺と一緒に行くか?」
彼女にとっても悪くない話だ。互いにメリットがある。少しは考えるだろう。
と思いきや由来はきっぱり言った。
「私は、ジョースターさんや承太郎と約束しました。だから、行きません」