第6章 忍び寄る“影”(敵)
「え?」
実はポルナレフには、前から聞きたいことがあった。
いつも弱気で意思表示もしない彼女だからこそ、直接聞きたかった。
「てめえも、別の目的があるんだろ?なら何で目的が違うアイツらと、今でも一緒にいやがる?」
シンガポール行きの船ですでに、彼女の目的を聞いていた。
それは、2年前に突如襲ってきた謎の敵の正体と居場所を突き止めること。
そして、彼女がその敵にどうしても会わなければならない理由は、彼女自身しか知らない。
「…確かに、残された時間は少ないかもしれません。ですが、私がここまで来れたのは、ジョースターさんたちのおかげでもあります。だから、私が彼らのために行動するのは当然です」
「だがそれは“義理”ってやつだろ?周りに縛られて、本来の目的を見失っちまうと、本末転倒ってやつだ。おめーはもうちっと、自分のことを考えた方がいいぜ」
この時彼女は、普段のおちゃらけたポルナレフとの大きなギャップを感じた。
言っていることに筋が通って、さっきアヴドゥルと喧嘩した割には冷静だったから。
だからうまく言い返せない。
(“義理”…か。確かに、私が今まで誰かを助けたいと思っていたのは、義理人情かもしれない…)
ジョースターさんと承太郎は、家族のため戦っているけど、私とホリィさんは他人。
ホリィさんと出会った時、“家族愛”みたいなものを感じたが、それ自体が戦いの動機じゃない。
私がホリィさんを家族のように思うから、戦うんじゃあない。
ただ…
「それかてめー。俺とは違ってジョースターさんや、承太郎についていくのに何か特別なこだわりがあるのか?」
「そ、それは…」
由来の顔が曇り、一歩後ずさりした。
「ま、言いたくねえなら言わなくてもいい」
(違う。今私がここにいる理由はそんなことを話すためじゃない。話が本題から全く離れてしまっているじゃあないか)
首をブンブン横に振って、自分に言い聞かせた。
「私はこんな時、相手にどんな言葉をかければいいか分かりません。人を説得させるのは苦手ですし、アナタの言い分も理解できます。
ただポルナレフさん。今ならまだ引き返せます。いくらアナタでも、敵は絶対アナタのことを攻略しています」