第6章 忍び寄る“影”(敵)
「何じゃと…?」
「その、できれば1人で…」
由来はジョセフに単独行動する許可を求めた。
前回は勝手に行ってしまったが、今回は許しを得ようとしている。
「まさか、説得するためか?」
「……」
あの由来が、まさか自分から…
それほどさっきのケンカが嫌だったのか
アヴドゥルはさっきの激情した態度から冷静になった。
「敵は私たちの素性を把握済みだ。私や君自身が言ったことだぞ」
「承知しています。しかし、こんな別れ方…後味が悪すぎます」
“腰抜け”。“幻滅した”。
共に旅をした仲間だったのに、明らかに決裂してしまった。
「敵に、別れを言う余裕もないほど窮地に追いやられたわけでもないのに、仲間同士でこんな別れ方はないです」
「……」
「説得出来るかは分かりません。でも、せめて最後に一言だけ…」
仲間とのコミュニケーションも好まない由来。
そんな彼女が、仲間のためにできることをしたいと思っていた。
「彼がどこに行ったのか見当はつくので、大丈夫です」
今のポルナレフは誰にも耳を貸さない。
でも、可能性があるとすれば、女性で心優しい彼女だ。
「…分かった。気をつけろよ」
「ありがとうございます」
由来はポルナレフの後を追った。
花京院はその後になって気づいた。
(そういえば彼女の目的も、“人捜し”だったな…まさか……)
とある大通りにて、
ポルナレフは物凄い形相で、すれ違う人々の左手を目で追った。
(チッ!どこにいやがる…!)
ポルナレフのそばを通ったほとんどの人が、彼の周りに漂う怒りのオーラにぎょっとした。
「ポルナレフさん!」
聞き覚えのある声が自分の名を呼んだ。
ポルナレフが後ろを向くと、そこには由来が立っていた。
「由来!お前どうしてここが分かって…」
「アナタはレストランで何も口にしてないので、空腹のはずです。そして、この大通りには、屋台がたくさんあると評判です。何より
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ポルナレフさんが船で言っていたことなので、すぐピンと来ました」
ポルナレフはハッとした。
『そんな機嫌を損なうな由来さんよう。インドにはおいしい屋台もたくさんあるらしいぜ』