第6章 忍び寄る“影”(敵)
「以前DIOに出会った時、恐ろしくて逃げ出したそうだなッ!そんな
・・・・
こしぬけにおれの気持ちはわからねーだろーからよォ!」
「なんだと?」
アヴドゥルは4ヶ月ほど前、エジプトのカイロでDIOに会った。
手合わせしたわけでもない、目の前にしただけで感じた、その危険なオーラ。
肉の芽を植えられるよりも先に逃げ、その魔の手から逃れることができたのだ。
アヴドゥルでも、その時のことをラッキーだと思っていたが、逃げたことへの後ろめたさも感じていたかもしれない。
今回の旅も、その時の自分の弱さを自問するためでもあった。
そして今、自分でも気にしていることを触れられ、腰抜けだと言われた。
「ほぉ~プッツンくるかい!だがな、オレはてめー以上にもっと怒っていることを忘れるな。あんたはいつものように大人ぶって、ドンとかまえとれや!アヴドゥル」
「こいつ!」
アヴドゥルはカッとなり手をあげた。
ガシィ
しかし止められた。由来によって。
「それはダメです」
「!」
アヴドゥルはこの時、2つのことで驚いた。
1つは、思いっきり振りかぶった腕を、難なく彼女が止めたこと。
大の男が力一杯こめた腕なら、それなりに力がある。
それを女性が、しかもまだ子どもの彼女が止めることができたのは不自然だった。
そしてもう1つは、掴まれた部分から腕全体まで寒気が伝ってきたこと。
まるで彼女の手から冷気が送られてきたよう。能力を使ってるわけでもないのに、背筋が凍りついた。
DIOに会ったときと同じような感覚を味わった。
ゾワァッ
「もういいやめろ。行かせてやろう。こうなってはだれにも彼をとめることはできん」
5人は、遠ざかっていくポルナレフの背中を眺めた。
「いえ…彼に対して幻滅しただけです。あんな男だとは思わなかった」
たった数日でも、共に修羅場をくぐり抜けてきた仲だ。
だが、別れはあっという間だった。
由来はさっきの言葉が、ひどく引っかかった。
“てめーに妹を殺されたオレの気持ちがわかってたまるかッッ!!”
「ジョースターさん。ポルナレフさんに言い忘れたことを思い出したので、追いかけてもいいですか?」