第6章 忍び寄る“影”(敵)
「あれ?知らないの?ピアニストっていうのは、ピアノの演奏者のことで、演奏者は文字通り演奏する人のことを言うんだよ。ピアニストさんは紛れもないピアニストだよ」
「そうかもしれないけど…」
自分より小さいのにこんなに積極的に笑顔で話しかけてくるなんて
あと近くで見て分かったけど、この子の服装は上質な生地でできている
礼儀正しくて上品そうだから、もしかしたら高い身分の子かもしれない
このレストランにいるから、多分そうだ
「私もこれから頑張るから、ピアニストさんも
・・・・・・・・・・・・・
これから頑張ってくださいね」
「?」
頑張る?「“ピアノを”頑張って」ってこと?
でも、私のこれからの旅を応援してくれているような気もした
もちろん、この子は何も知らない無関係者だが、何故だかそんな気がした
女の子は椅子にかけていた松葉杖を取った。
「私はインディラっていうの。ピアニストさんのお名前は?将来もし有名なピアニストになるんだったら、私が一番のファンとして知りたいです」
「……由来だよ」
名字は言わなかった。
「聞いてくれてありがとう。小さくて可愛い素敵なお客さん」
私は女の子を見送ってから、席に戻った
周りは再び雑談や食器の音の賑やかさが戻り、少しホッとした
ずっと驚きっぱなしだから、店の中が普通に戻ってくれて良かった
「お疲れ様。かっこよかったよ」
花京院が満足そうににっこりした。
「本当にスゴいぞ由来。何だかこっちも誇らしい気分になったわい。それにあの曲、何という、かその~…」
ジョセフは感想が言いたかったのだが、声が出ないほど感動したあまり、言い表せなかった。
しかし、意外な人物が代わりに言った。
「走ったような疾走感があったな」
承太郎だ。