第6章 忍び寄る“影”(敵)
(私は食事客の人たちのためや、ましてやジョースターさんたちのために演奏してしたわけじゃあないのに…)
よく考えたら私は場違いだ
ここはちゃんとした名高いピアニストが演奏に来るための高級レストラン
なのに私のような子供が易々と弾いてしまった…
「す、すいません。お食事の邪魔をしてしまって…」
“聞いていただきありがとうございます”なんて、ちゃんとした演奏のプロが言うことだ
私が言える立場じゃない
「そんなとんでもない!こんな暑いお昼に貴重な体験をしてもらったよ」
「久しぶりにいいものが聴けました」
「君みたいな演奏者は初めてだ。ありがとう」
ワイワイ
私はジョースターさんがいるテーブルへ行きながら、周りの食事客にただペコペコとお辞儀をした
テーブルにつくと、ジョースターさんたちがニコニコしていた
「いや~ピアノができるとは、知らなかったぞ」
「言ってませんでしたから」
色々と情報が多すぎるので、とりあえず気持ちを落ち着けるために水を飲んだ
(目立たない方がいいと言ったばかりなのに、これじゃ格好がつかないな…)
ソワソワソワソワ
「……」
演奏のときは緊張のきの字もなかったのに、観客に賞賛された途端のこの変わりよう。
承太郎は彼女のそんなギャップが少し気になった。
そして彼女の演奏みたいに、音楽に関しても昔から興味があった。何故なら…
ジョセフは何か小細工を思いついたようにニカッと笑い、由来にこんな要求をしてみた。
「由来はジャズとか弾けるかのう?」
「ジャズ?」
ピタッ
承太郎は水のグラスを持つ手を止めた。
「弾いたことは……あまりないと思います、が?」
ジョースターさんは、「ビートルズ」とか「マイケルジャクソン」とか、ロックバンドやポップを聴きそうな人だ
なのに、何でそのジャンルなんだろう?
「実は承太郎の父親が“ジャズミュージシャン”でな」
「おいじじい」
承太郎は自分のことを他人に言われるのはあまり好かなかった。
特に下らないことを考えるお調子者ジョセフには。
「それって“空条貞夫”さん?」
『!』
名前を口にした彼女を含め、全員がびっくりした。承太郎の父親の名前を知っていたことに。
そして彼女自身も、旅の仲間の1人の父親が、自分が知っている人物だと言うことに。