第6章 忍び寄る“影”(敵)
あっさり元のおちゃらけた感じに戻り、由来はホッとした。
そしてポルナレフはお手洗いに行く際に、ジョセフに注文はゴージャスなものを頼んだ。
ジョセフは不動産王でもありSPW財団と縁があるから金に関しては太っ腹だが、こうも隔意の欠片もなしに頼まれるのは虫が好かなかった。
(全くあの男…由来みたいな謙虚さをもっと見習ったらどうなんだ?)
まだ17というのに、彼女の方がよっぽど大人じゃあないか
まあ、ワシも若い頃は謙虚に程遠い男じゃったが
香港の時のようなものではない料理を注文して、しばらく時間を待つことになった。
ポーン、ポーン、ポローン
(?)
由来は微かな音を聞き取った。
周りの食事客は談話を楽しんで、雑音が混じっていたから、皆は気付いていないが確かに聞こえた。
その時、“懐かしい”という言葉が彼女の頭にすぐ浮かんだ。
しかしどこか違和感を覚え、音が聞こえる方へ目を向けた。
(ん?あれは…)
「ジョースターさん。食事を終えた後はどういたしますか?」
「そうじゃな。近くのホテルに泊まり、出発は明日の午後にしよう。明日午前はかなりの雨が降るらしいから交通機関が乱れるかもしれん」
「そうですね。インドだと余計に混みそうですからね」
これから本格的に陸路に入るから、周りの人間に気を配りながら旅をしなくてはならない。
飛行機のときみたいに、無関係の乗客を巻き込まないよう注意も必要だ。
その時、ピアノの音が室内いっぱいに流れてきた。
「!」
店の中の誰もが、談話を止めた。
それは、ヨハン・パッヘルベルの“カノン”という曲だった。
最初は小さな音が、徐々に大きく力強い音へと変化していった。
川のように滑らかで繊細でありながら、一つ一つの音に魂が込められているような力強さもあった。
見事な演奏だ。
(なんじゃ。プロのピアニストの演出があったのか)
ワシでも知ってる有名な曲じゃ
このレストランにしてよかったと思いながら、一体誰が弾いているのだろうと、ジョセフは音の方に視線を向けた。
「!!」
しかし予想は斜め上をいっていた。
ピアノの目の前にいるのは、今さっきまで2つ右隣に座っていた人物。
自分たちの旅のお供である由来ではないかッ!