第6章 忍び寄る“影”(敵)
『!!』
「な、何故そう思うのじゃ?」
「…特にこのインドでは人が多すぎます。敵はそれに紛れて、私たちに近づいてくるかもしれません」
木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中。
スタンド使いがスタンドを出さない限り、見分ける方法はない。
タバコの煙を吸うと鼻の頭に血管が浮かび上がることもないのだから。
「へ~、人が多いと見つかりやすい気もするが、逆に身を隠すこともできるのか」
さすが承太郎並みに頭が切れるなと、ポルナレフは感心した。
「そして戦いになったら一般人を巻き込むかもしれない。それか人質を取られることも考えられます。
しかも相手は私たちの能力と顔も把握している一方で、私たちは敵を全く知りません」
当然だが、DIOは刺客にジョースターたちの顔とスタンド能力を伝えている。
特に善の心を持たない悪の才能がある奴を金で雇っている。
DIOは100年前、切り裂きジャックをゾンビとして手下に引き入れたこともあった。
悪の才能がある者は、精神力も強いから強いスタンド使いである傾向があるのだ。
だから刺客は、目的を果たすためなら手段を選ばない奴らばかり。
それで殺人事件やら傷害事件やら起これば、旅も困難になる。
インドには、物乞いで放浪している者も多い。
それらを考慮すると、こちらが優勢であるとは考えづらかった。
「だが大丈夫だ。もし敵に襲われてもこのポルナレフが、敵が呼吸をする暇も与えずに倒すからよ」
ポルナレフは自分のスタンドに確固たる自信があった。
妹のかたきを倒すために今まで戦ってきただけあり、復讐の戦士として今まで色んな修羅場を乗り越えてきたから。
「ポルナレフ。エボニーデビルでお前が一番身にしみたはずだ。このインドでもあまり気は抜くなよ。お前は少し気を抜くことがあるからな」
「ああ?」
アヴドゥルは軽い忠告と親切のつもりで言ったが、どうやらポルナレフの神経に少し触ってしまったようだ。
2人の間に不穏な空気が流れた。
「あ、でもポルナレフさんのスタンドは確かに強いですよ。自信があるのは、実力があるからこそだと思います」
由来は慣れないながらフォローをした。
「おー、よォ~く分かってんじゃあねえか由来」