第6章 忍び寄る“影”(敵)
あまりの人混み、車の騒音と排気ガス、牛の排泄物の匂い。
「これほど“混沌”(カオス)という言葉が似合う場所はないんじゃない?」と思うくらい、人が多すぎた。
(いつかのオイルショックで起きたトイレットペーパー騒動みたいだな…)
社会の資料集で見ただけだけど、確かこんな感じにカオスで迫力があったのを覚えている。
「ぼくはもうサイフをすられてしまった」
「ア、アヴドゥル。これがインドか?」
「ね、いい国でしょう
・・・・・・・・・・・・・・
これだからいいんですよこれが!」
カルカッタ…人口1100万人。浮浪者の数200百万を超す。19世紀のイギリス人はこの街を“この宇宙で最悪の所”と呼んだ
そしてジョースターたちは近くのレストランへ入ることができた。
店の中はなかなかきれいなで、さっきの小汚い外とは逆で、由来は少しホッとした。
「ハッハッ。さあこれを。チャーイです。美味しいですよ」
チャーイ
インドの庶民的飲物。紅茶と砂糖としょうがで牛乳でにこんだもの
「はぁ~、やっと落ち着いたわい」
日本のコーヒーに難癖をつけるジョセフの口には合った。
「要はなれですよ。なれればこの国のふところの深さがわかります」
「なかなか気にいった。いい所だぜ」
「マジか承太郎!マジに言ってんの?おまえ」
「フ~。インドか…驚くべきカルチャー・ショック。なれれば好きになる…か。ま…人間は環境になれるっていうからな」
由来はチャーイをおいしそうに飲んでいた。
いつもより柔らかな表情になっていたから、多分おいしいんだ。
列車でもホットコーヒーを飲んでいたし、どうやら彼女は暖かい飲み物が好きらしい。
ホットな飲み物を飲んでほっと一息ついた。
「由来。人ごみはやはり苦手だったかな?」
「……いえ、あのどさくさに紛れてスタンド使いが奇襲しに来るんじゃあないかと思ったのですが、それらしき人物はいませんでした」
「む。あの時も警戒していたのか」
さっきあの場には、物乞いをする水簿らしい格好の人間ばかりで、殺気を放ったり異様なオーラを出している人はいなかった
「人が隠れるのに絶好の場所は、物陰ではなく人の中ですから」