第6章 忍び寄る“影”(敵)
インド行きの列車を降り、現在、船でカルカッタへ向かっているジョジョたち一行。
もうすぐ到着の頃、アヴドゥルはインドへ行ったことがあるから随分と落ち着いていた。
しかしジョセフとポルナレフは、行ったことのない異国の地に足を踏み入れることを少し戸惑っていた。
「アヴドゥル…いよいよインドを横断するわけじゃが
その……ちょいと心配なんじゃ……
インドという国はカレーばかり食べていて病気かなんかにすぐにでもかかりそうなイメージがある」
「おれカルチャーショックで体調くずさねェか心配だな」
「フフフ。それはゆがんだ情報です。心配ないです。みんな…素朴な国民のいい国です…わたしが保証しますよ…」
一方高校生トリオの承太郎、花京院、由来は全く動じていなかった。
子供なら今までにない体験に心を踊らせることがよくあるが、彼らの誰にもそれが当てはまらなかった。
中でも由来は船にいる20分間ずっと、窓の外の海をずっと眺めていた。
他の皆はそれなりに話していた中、彼女独りだけは。
電柱と変わりないくらい全く動かない。
(そんな長い時間眺めているだけで、退屈しないのか彼女は?)
香港の海の時とは違って、ここは甲板ではなく狭い船内だ。
窓は小さい円形で、あまり見応えはない気もするが…
花京院はそこらへんが気になったので聞いてみた。
「兎神。そんなにじっとしててつまらなくないのかい?」
「……」
由来は5秒くらい間を空けた。
「海…好きだから」
「海?」
そういえば、由来は香港の船でもずっと海を眺めていた。
あれは純粋に、海が好きだったからなのか。
「へぇ~。知らなかったよ。もしよければ、その理由も聞いてみたいな…好きに理由はないとよく言うけど」
「……そうだな…“全ての始まり”なんて表現できる場所だからかな?」
「全ての始まり?」
そばにいた承太郎も、由来の話が少し気になって耳を傾けていた。