第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
初めは…望まなかったかもしれない…それでも私は……自身を適用させる。
私は力を取り戻すために、奪われたスタンドを……“シロ”を何とか取り返す。
いや。何としても取り返す。それが私がここにいる理由
御手洗いを出て、列車の廊下を進んだ。
(しかし…かなり引きこもってしまった。大便だと勘違いされたらまいるな。特にポルナレフさんには)
ドカッ
考え込んでいたせいか、別の乗客にぶつかってしまい、その人はショルダーバッグを落とした。
「すみません」
「いえッ…こちらこそ」
こっちがぶつかってしまったにもかかわらず、向こうが先に謝ってくれた。
相手の顔を見ようとしたが、キャップを深くかぶっていて、バッグを拾うために屈んでいたからよく見えなかった。
「あの…申し上げにくいのですが、どこか悪いのですか?」
「え?」
私は唐突に質問され、そんなに顔が青いのかと思わず自分の顔に触れた。
「だ、大丈夫です」
「最近、あなた何か無茶しておりません?もしお連れの方がいらっしゃるのなら、きっとアナタのことをご心配なさりますよ」
「……そうですね。ならなおさら早く治さないといけないですね。お気遣いありがとうございます」
そして何事もなくその場を去った。
その男のバッグの中には、DISCが1枚入っていた。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「フッ。やはり、ラバーソールとやらが言った通り、確実に弱っているな。この私のことも気付かないとは。そろそろ頃合いか」
ド ド ド ド ド ド
そのDISCには、ホワイトシャドウが描かれていた。