第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
アヴドゥルが言ったように、スタンドの強さとは本人の精神力の強さと比例している
僕よりも彼女の方が大変な思いをしてきたのは、何となく察しがつく
皮肉にも、彼女の周りの環境が、今の彼女を作り上げてしまったのだろうか
「確かに…そうですね…」
由来は花京院に便乗し、カップのコーヒーを飲んだ。
「そういえば、君って女子校に通っているらしいね。なら僕たちに遠慮がちになるのは無理もないか」
「え?何で女子高なんだ?」
ポルナレフは聞いた。
もしかして男が苦手なのか?そういやアンには普通に接していたな。
「……気付いたらいつの間にかいたって感じですかね?」
『?』
「あまり覚えてないということは、そんな大した理由はなかったってことです多分」
由来はまたコーヒーを一口飲んだ。
「呼称は何でも結構です。しかし花京院くんの言う通り、やっぱり名字の方が気楽でいいです。名前を呼ぶのも呼ばれるのも、何だかこそばゆいです」
ジョセフとアヴドゥルが彼女を名前で呼ぶきっかけは、ホリィが彼女を「由来ちゃん」と名前で呼んでいたからだ。
「でも今さら名字で呼ぶのは面倒だぜ。
・・・・・・・
親からもらったから大切なのものは当たり前だけどもよ」
ピクリッ
「……」
承太郎はポルナレフの言葉に少し反応したが、口出しはしなかった。
(そういや由来はジョジョのこと一度も名前で呼んでねえよな~)
承太郎とは正反対にポルナレフはのんきなことを考えていた。
彼女は花京院には「花京院くん」と呼んでいるが、承太郎に関しては呼んだことがない。
周りの仲間は「承太郎」や「ジョジョ」と名前やニックネームで呼んでいるから、「空条くん」なんて呼べる空気ではなかった。
空気を読むことも気にするから、何て呼べばいいか分からず「アナタ」と代名詞を使うしかなかった。
(何かコイツらの微妙な距離がいまいち掴めないっつーか、お互いに干渉しないようにしてるっつーか)
特に由来は自分からガンガン行かねえ性格だから、承太郎がその内気さに合わせてるっつうか
俺の妹は、昔よく「高い高いして」とお願いしてきた
内気とは程遠く明るく優しい、自慢の妹だった
(俺は積極的な女が好みだが、これはこれで気弱な娘もかわいいけどよ)