第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
最愛の妹のかたき。自分の目的の謎の男の正体が、段々と分かってきた。
そのことに喜びを感じているも、同時に復讐心が強くなっていった。
「そういや、アンはどうした?」
「きっとおとうさんとの約束の時間が来たので、会いにいったのでしょう」
「あのガキ、どうもお父さんに会いにきたってのがうそくせーんだよな。ただの浮浪児だぜありぁ…ま…いないと少しさびしい気もするが…なあジョジョ」
承太郎は軽い笑みをこぼした。
「あ、それならさっき会いましたよ。駅前にいました」
「だから遅れてきたのか」
「はい。どうやら、皆さんにちゃんとお別れしたかったのですが、躊躇ってしまい彷徨いていました。礼儀正しくていい子でした」
「いや、お前ほど礼儀正しくはない」と皆は思った。
「由来は逆にもう少しフレンドリーになった方がいいぜ。堅苦しいとこっちも気ィ遣っちまうからよ」
ポルナレフが言うと少し疚しいかもしれないが、確かに由来はチームの中でも特に堅苦しい。
花京院も確かに礼儀正しいが、意外と辛辣な部分があったりなど、まだ高校生らしい面がある。
旅を共にして1週間近く経つから、もう少し肩の力を抜いてもいいのではないか。
「はぁ…ど、努力してみます」
「ていうか、お前ら由来のこと名前ですら読んでねえじゃんかよ。同い年なのによ」
『!』
今度は承太郎と花京院に話を振ってきた。
花京院はポルナレフグイグイくる性格に嘆息した。
「ポルナレフ。高校生ってのは、同性ならともかく、男女間で名前で呼び合うのはよほど仲がよくなきゃ難しいもんなんだ。幼なじみならまだしも」
「え?そなの…?」
「ああそうだ」
日本人の感覚がやはり読めないポルナレフはきょとんとした。
(といっても、僕もそんな友達と話したことはないけど)
ただ、同級生が会話しているところを見てそんな印象を受けただけだ
周りの皆には見えないハイエロファントを、学校中に飛ばして暇をもてあそんだこともあったから、人間観察はしていた
(でも確かに、彼女は僕が見た人たちの誰にも当てはまらない)
スタンドを生まれつき持ち、何かしら苦い経験をしてきたという点では僕と似てるかもしれない
でも、彼女の方がもっと深い気がする……