第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
翌朝、シンガポール駅。
ジョジョたち一行は、一昨日と昨日の敵の襲撃を乗り越え、ここシンガポール駅で電車を待っていた。
昨日花京院と承太郎が予約したチケットを、それぞれが持っていた。
「ふう。やっと釈放されたと思いきや、すぐ列車に乗るとは。あのホテルの高級ベッドをもっと満喫したかったのお」
「ポルナレフ。こっちはこっちで大変だったのだ。ベッドの寝心地なんて満喫するほどの余裕はなかったぞ」
ポルナレフはSW財団の信頼できる弁護士によって、無罪が認められ釈放されていた。
脳天気そうな態度にアヴドゥルはまた注意した。
「僕は敵に化けられ、承太郎は敵に遭遇して、シンガポールの美しい風景も見る余裕は無かったですね」
花京院は苦笑いした。
ジョセフは自分の懐中時計を使って、時間を確認した。
「列車が来るまであと5分か」
こんな会話がある中、全く喋らない者が2名ほど。
1人は、皆の輪から少し離れたところに立っている由来。
もう1人は、皆の話を小耳にしながら彼女のことを気にしていた承太郎。
由来は駅とは反対側の外を気にしていた。
「どうしたんだ由来?お前も観光地に未練があるのか?」
女性に積極的なポルナレフが声をかけた。
由来は皆からは見えないない位置で、メモ帳から紙切れ1枚を取り、それをくしゃくしゃにした。
「すいません。捨てたいゴミがあるので窓口のそばにあるゴミ箱のとこへ行ってもいいですか?」
シンガポールでのゴミのポイ捨てはご法度。
ポルナレフは経験済みだったので、すぐにピンと来た。
きっとガムか何かのゴミだろう。
確かに、待っている間にもうっかりして落としてゴミ捨て扱いされたら嫌だろう。
「じゃあ俺が捨ててくるぜ」
ゴミをもらうために笑顔で手を出した。
「いえ、ポルナレフさんは刑務所上がりで疲れていますから」
「そうか?じゃあジョジョに任せれば…」
「いえ、本当に大丈夫です。これ以上迷惑はかけられないので。失礼します」
由来はそそくさと窓口へ向かった。
「ゴミ捨てごときで迷惑なんて。日本の学生は男女問わずこんな堅いのかねえジョジョ?」