第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
承太郎を殺し損ねたとしても、向こうの合流地点へ行きアイツだけでも足止めすりゃ金はたんまりもらえる!
今は逃げるためにできるだけ隙を作るんだ…!
「う、嘘を付いてない証にもう一つ教えてやる。
DIOに“スタンド”を教えた魔女がいる。“由来”ってスタンド使いの噂を聞いたのもその老婆からだ」
「!」
「ソイツの息子がさっき言った4人の中にいる…
名前はJ・ガイル。目印は両手とも右手の男!カードの暗示は“吊られた男”…ポルナレフの妹のかたきだろ?そいつの能力は少しだけうわさで聞いたぜ。
“鏡”だ。“鏡”を使うらしい。実際見てねーが、ポルナレフは勝てねーだろう。死ぬぜ」
…と、これが承太郎が得た情報全てだ。
その後は敵の汚い策士で反撃されたが、マンホールを飛ばすほどのスタープラチナの強いパワーにより勝利した。
敵は再起不能で気絶して、血だらけの状態で海にプカプカ浮いた。
しかし情報は得たので、少しの情けで命の危険になるほどの重傷にはしなかった。
((俺も、スタンドを人殺しにするのはなるべく避けたいからな。運が良けりゃ、目撃者に通報され病院に運ばれるだろうぜ))
その時、発砲音が聞こえたので、戦いの後にも関わらず警戒心を一切緩めずに、現場へ向かった。
敵から得た貴重な情報を頭の中で整理しながら。
((“あの”情報…まさか…))
そして何という偶然か、部屋で寝ていたはずの由来とばったり会った。
『!!』
『あ…!』
敵に言われたことで色々と気になることはあったが、様子だけ伺うことにした。
そのためにベンチの隣に座り、慣れない会話を通じてまた確信した。
“やっぱり……嘘をつけられないくらい馬鹿正直だ”
承太郎はどうしても、彼女がすでにDIOと会っていることが信じられなかった。
しかも、スタンドを奪われたなんて信じられないことも。
まさか、本人は気づいていないのか?
(……いずれにせよ、DIOとアイツには深い因縁があるのは、より一層理解した)
今のところは、アイツが俺たちを裏切るなんてマネ、するとは思えねえ。
だが、もし敵の言っていたことが本当なら、その時は……