第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
遠くから、2人がベンチで普通に話していた所をハイエロファントで見ていた。
2人とも全然笑ってなかったのが印象的だった。
「かもな……」
(うわ……承太郎怒ってるな。僕が来たことで、2人きりのムードを邪魔したってところか……)
承太郎は本物の花京院と再びケーブルカーへ向かった。
承太郎は決して怒っているわけではなかった。
ただ、いつもより深刻そうに悩んでいただけだった。
(やれやれ……色々と話がややこしくなってきたぜ……)
1時間ほど前
"黄の節制"(イエローテンパランス)のスタンド使いである敵に逆転勝利した時のことだ。
承太郎は敵を自分ごと海に突き落として弱らせたところ、本体を直接叩き狙って、再起不能にさせた。
足腰が海水に浸かった状態のまま、弱った敵に言った。
「しゃべってもらおうか…これから襲ってくる“スタンド使い”の情報だ……」
「そ、それだけは口が裂けても言えねえ……ぜ。“誇り”がある……仲間のことはチクルわけには……いかねえ……ぜ」
話せば裏切り者として処分されるかもしれない。敵はそんな恐怖心を抱いていた。
ギュグン
承太郎はすごい険相で拳をあげた。
「なるほど。ごりっぱだな」
しかし、承太郎からさらに強烈な攻撃を食らうという恐怖心の方が勝り、自己防衛の本能で自然と口から情報が漏れた。
「思い出した。『死神』『女帝』『吊られた男』『皇帝』の4人が、おまえらを追ってるんだった!」
「ふーん。で!どんな能力だ?」
「そ……それは知らねえ」
また殴られそうになり、敵はビビりながら必死に情報を吐く。
「いや!こ、これは本当に知らねえ!スタンド使いは能力を他人には見せない……弱点を教えることにほかならねえからだ。
だッ……だから、お前んとこの“小娘”の能力を知っていたDIOは、アイツのスタンドを奪ったんだろ」
「!!」
“小娘”だと?
「どういうことだ? 何で“アイツ”(由来)が出てくる…?」