第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
「!」
(“羨ましい”…だと?)
『ワシは自分の“能力”(念写)で彼女の考えを読むつもりはない』
ジョセフは言った。人には隠したいことの1つや2つはあると。
承太郎は聞き出そうなんてつもりじゃあなかった。しかしまさか今こんな形で…
「…私は「喧嘩をふっかけてきたDIOの刺客に会うために同行する」って言ったけど、正直そんなことどうでもよかったんだ。だから2年間ずっと何もしなかったし、コケにされても何ともなかった。プライドなんてありゃしない」
由来は、さっきまでの戸惑いも不慣れも忘れ去り、淡々と自分自身のことを話し始めた。
手のひらを膝の上から動かした。
「でもね、アナタやジョースターさん……ホリィさんを見て少しだけ実感したことがあったの。それを言葉で表すとしたら多分……“家族愛”ってやつかな?」
朝起きると、台所からいい匂いがしてきた
気付かれないように台所を覗いたけど、ホリィさんはすぐに私に気付いて声をかけてくれた
『おはよう。よく眠れたかしら?』
机の上には人が作ったあったかいご飯が用意されていた
『由来ちゃんは目玉焼きには醤油?それともソースかしら?』
全てが、今までにない体験だった
そこで、今までにない感情が芽生えた
何て言い表したらいいか、自分でも分からなかった
でも多分、私は今まで、
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こんな会話を夢見ていたかもしれない…
(あんな聖母みたいな人が、殺されていい理由なんてない……)
神様は実に理不尽だ…待っている家族などいない私の方を、生かしておくなんて…
「人助けに理由はないって言ったけど、私がここにいる理由は……今思えば、
・・・・・・
羨ましかったからだと思うよ……」