第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
でももう必要ないと、銃を道の隅に置いといた。
弾はもう入ってないし、その内別の警官が気付いて拾ってくれるだろうと。
何より銃刀法違反だ。
(合流も出来て敵も倒した。なら早くホテルに戻らなければ。今頃ジョースターさん、“孫”が大変だと“まご”ついているかもしれ…)
『言ったじゃろう。何も言わず独断で行動するなと』
「!」
ア、ヤベ…
ホテルで言われたジョセフの言葉を今思い出し、少し慌て気味で承太郎に頼みこんだ。
「今まで私が独断で動いていたことは、ジョースターさんには黙っててほしいんだけど、ダメ…かな?」
彼女は考えるよりも先に行動するタイプ。
そして、直面したことに熱中するあまりに言われたことをつい忘れてしまうこともしばしば。
誰にも相談せず単独で敵のところへ行ったとなれば…
だからここは孫の承太郎に顔を立ててもらおうと考えた。
地元では敵無しと言われるほどの不良を、あごで使おうとする女子高生の彼女も、また普通じゃない。
承太郎はすぐそこに公衆電話があることに気付き、ジョセフと連絡を取ることにした。
「やれやれ」
プルルルルルル ピッ
『もしもし承太郎か!今どこにいる?』
「じじい。シンガポール駅から少し離れたとこにいる。敵はいたがもう片付けた」
『そうか!無事で良かったわい!それで今花京院をそっちに向かわせている。由来を探してもらって…』
「今俺の後ろにいる。ソイツも無事だ」
『Oh! goodness!』
やはりさすがワシの孫だ!
東京の23区より少し大きいくらいのシンガポールでよく見つけたな
『また独断で行動したらしいじゃあないか。まったく』
「違え。元々、俺と“ガキ”(アン)の跡を気付かれぬよう付けてやがったんだ」
あの時ゲーセン帰りの本物の花京院は、寝ていた彼女の代理として承太郎に同行を頼まれていた。
だから由来が急に居なくなったのは、勝手に行ってしまったんだと推測していた。
一緒にいたアンの証言で、由来は承太郎と一緒にいないことは分かっていた。
ちなみにその後、ロビーに行ったが承太郎の姿が見当たらなくドタキャンされたと思い、日光浴でちょっとした寂しさを紛らわせた。
((結局僕らの仲もそんなもんか…))
かなり落ち込んだ。