第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
カチッ カチッ
しかし鉛玉は出てこなかった。
不発? いや違う、弾など最初から入っていなかった。
「……」
承太郎は特に反応も見せずに、最初から見透かしているような余裕ぶりでいた。
「ハァッ…」
由来は力が抜けてその場で跪座した。
「ごめん。どうしても本物かどうか確かめたくて。少し神経質になり過ぎてた」
承太郎は全く気にしていない様子でいたが、由来は反省して自分を少し責めた。
言葉も少し変になっていた。
“やっぱり…嘘は苦手だ”
承太郎がこんなに冷静でいられたのは、恐らくスタープラチナで、銃口の奥に何が入ってるか把握していたんだと考えた。
(私が見えない角度で、抜群の視力で)
「花京院くんの偽物なんじゃあないかと、最初は半信半疑だったけど確信したよ。アナタは間違いなく本物」
そう言いながら、由来はふと承太郎に対し、こんな事を思っていた。
何だかいろいろ、この人には一生勝てない気がする
まるで弱点がないから
自画自賛じゃあないけど、私のホワイトシャドウも素早さが売りだ
けど、スタープラチナは素早さだけでなく圧倒的なパワーも精密さもある
スタンドを発現したのは、私と出会うたった数日前だと聞いている
経験はまだ浅いはずなのに、大した人だよ
今は違ったけど、もしスタープラチナとホワイトシャドウが本気でやり合ったら…
「いつまでそんなとこで座っている?」
なかなか立ち上がらない由来に、承太郎は声をかけた。
「……こんなに、精神削ったのは初めてかもしれない。圧倒的な力を持つ敵に立ち向かうのは勇気ある行動だけど、仲間に立ち向かうのもまた勇気がいるね…」
由来はよいしょと立ち上がった。
「とにかく…アナタが無事で良かった」
取りあえず承太郎はこれまでの経緯を話すことにした。
偽花京院が襲ってきて、その戦いはケーブルカーにまで発展した。
確かに敵は手強かったが、己のスタンドの過信が仇となったと。
「で何でそんな物騒なもんを持っている? さっきの銃声もお前の仕業じゃあないだろ」
「その…話せば長くなるけど、私も偽花京院くんが仕掛けた罠にはめられたというかワザとはまったというか。これはその時に拾った」