第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
「お前、本気で俺を撃つ気か?」
「!」
承太郎のスタンドはあのスタープラチナだ。
素早い動きが出来る上、腕を折ることも容易いほどのパワーを持つ。
「この距離で撃ったとしても、俺のスタープラチナには効かねえことは、てめえもよく知っているはずだ」
弾丸をつかむほど精密な動きができるのだから。
「…なら試してみる?」
ギリィ…
ハンマーを引いて、あとは引き金を引くだけ。
「やれやれ」
この時、承太郎は刑務所で実際に自分の頭を撃ったことを思い出していて、何故か由来に警戒していない。
最初は少しぎょっとしたが、
・・・・・・
分かったから。
「敵のスタンドは、人に化ける能力だった。スタンドを衣服のように己に被せることによって髪の色や体格を変化させることができた。ほくろの位置まで本物そっくりにな。これで、
・・・・・・・・・
俺の疑いは晴れたか?」
そう。さっきまで偽物の花京院がいたのだから、疑うのは当然の行為だ。
今度は承太郎に化けているのではないかと、彼女が怪しがって試しに脅してみるのは賢明な判断だ。
そして今、敵の能力を詳しく説明したことで敵ではないことを証明した。
敵が自分のスタンドを教えるのは、弱点を教えるのと同じ事だからだ。
さっき承太郎が敵から聞いたことだ。
ちなみにその敵は承太郎に海でボコボコにされ、もう完膚なきまでに再起不能になったから由来に化けていることはマズない。
「私は…アナタと1週間しか行動を共にしていない。好きなタイプや曲も知らないから、確認のしようがない。
でも…この状況でも一歩も動かずスタンドも出さない、その冷静さ。アナタはやっぱり
・・
本物?」
ようやく分かってくれたらしく、不穏な空気がようやく消えた。
「でもごめん。私にはアンタを殺さなきゃいけない理由がある」
ついに由来は引き金を引いた。