第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
ホテルの1010号室にて、
花京院はハイエロファントでホテル内を隅々まで調べていた。
部屋にいたはずの由来が見当たらないから。
「ジョースターさん。やっぱりいません。恐らく、承太郎を助けに独りで行ってしまったと」
「ウーン。やはりまた…」
花京院の話を聞く限り、承太郎は本物の花京院と別れたところ、偽物はそこ狙い、本物よりも早く承太郎とロビーで合流してしまったんじゃ
今度は味方に化けることも出来るスタンドとは、敵の能力は多種多様な上厄介なものばかり。
由来はもしかして、さっきのワシとアンの電話を隠れて聞いてとっさに…
「ねぇジョジョのおじいちゃん。警察に通報した方がいいんじゃない?」
アンも承太郎の身を案じていた。
そばにはアヴドゥルは、じっとして動く気配もなく、腕を組んで深刻そうにしていた。
「心配する気持ちは分かる。ありがとう。だが、ワシの孫なら大丈夫じゃ。こっちもこれから花京院を向かわせる」
花京院のハイエロファントは遠距離型だから、探索するには彼が一番適役だ。
(だが、由来が承太郎に付いてくれるなら心強い気もする)
それに祖父のワシには分かる。承太郎自身は気付いていないかもしれないが、アイツは…
一方、外にいる2人は、
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
由来は銃を下ろす気もなく、承太郎の後頭部に向けていた。
腕は震えもせず心の躊躇もない。