第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
DIOはプライドが高いため、部下だからといって手加減されるのは嫌いなタチだ。
だが今ダービーは間違いなく本気で戦っていることは知ってた。
スタンドパワーの肩慣らし以外で、部下とこのように頭を使うゲームをすることを楽しみ満足していた。
「ダービー。お前は“由来”というスタンド使いを覚えているか?」
ピタリット
ダービーは一瞬、チェスの駒を置く手を止めた。
「ええ。もちろんでこざいます。彼女は私よりも長くDIO様に仕えていましたから。
・・・・・・・・
2年前の時点では」
魂を抜き取るスタンド能力を持つテレンス・T・ダービー。
そしてその兄 ダニエル・J・ダービーもまた似たようなスタンド能力を持つ。
兄弟揃ってスタンド使い。
DIOが奪ったジョナサンの肉体の影響で、ジョセフと承太郎とホリィにスタンドが発現したのと同じ理屈で、やはりスタンドとは、
血のつながりが大きく関わっているのかもしれない。
「フンッ。アレを仕えていたと言ってもいいのか。“お前の能力”でさえ、アイツの考えを見抜くのは難しいだろう」
「左様でございます。あの者は確かに変わり者だったというか、
・・・
今回も理解しがたいです。しかし、DIO様は奴の“そこ”がいいんでしょう」
ダービーはクイーンを使って相手のナイトを取り、DIOは笑みを浮かべた。
「確かに。アイツの能力は実に目覚ましいものだった。我が館の“門番”として、誰よりも優秀だった…なのにだ」
コツッ
DIOはルークの駒を使って、ダービーのクイーンを取ってそれをまじまじ見る。
このクイーンのように、一瞬で広範囲を凍らすほどのスタンドパワー
“今”は同じ“氷”の能力を持つペットショップが、この館の“盾”となっている
そして、“過去”の“盾”はジョースターと共に行動している
もしアイツが“本来の力”を発揮すれば…ほんの少しだけ厄介だな
(そもそも、
・・・
本当にジョースターに付いたのか。それとも
・・・・・・
ただの演技か…)
DIOはまた微笑を浮かべた。
「いずれにせよ、この先どう転がるかが楽しみだ。何故ならアイツは私よりも知っているからな。本当の“絶望”を」
コンッ
「チェック」
ダービーは気づかぬうちに、王手を取られた。
「お見事です。参りました」