第4章 【さん 雛鳥、海に出る】
見渡しても特に何かが見える訳でもない。
大海原に浮かぶのは私の船だけ。
「白って一体なんなんだろう?」
白、白……雲?
うーん、それは違う気がする。
「だって今は雲ひとつない快晴だし? ……んん?」
遠くの方。
本当に見えるか見えないかくらいの大きさでしか見えないけど、確かに何かある。
多分、船。多分。
「わっかんないなぁ~。望遠鏡とかないし」
まあわざわざ近づいてまで
確認する程のことではないし、スルーしよう。
まだあの島以外に上陸したことがないから積荷なんてないに等しいけど、念の為。……ね。
舵を切って進行方向を右に逸らす。
本当はすれ違うのも遠慮したいけど、
あからさまに変えるのもまたトラブルになりそうで怖い。
「面舵いっぱ~い!だっけ? ……まっ、触らぬ神に祟なしってことで」
取り敢えず波風立てず、平和に進むのが1番!
旅に出たから数ヶ月でリタイアとか、
お父様に顔向け出来ないからね!
小さな船の船首が、ゆっくりと首を横に振る。
進行方向を僅かに逸らして、またのんびりと進み出した。
「……やっぱりシルフィーの協力がないとゆっくりだなぁ~
当分あの子出てこなさそうだよねぇ、さっさとすれ違いたかったのに」
ま、気ままで行けばいっか。
あちらさんもまだ遠いだろうし、と船の方を見る。
「……おん」
物凄いスピードで進んでいるではないか!!
いや、恐らく大きいのも関係しているとは思うんだけどさ。
さっきより格段に大きく見える。
近くなってようやっと帆に描かれているものを認識することが出来た。
「ジョリー、ロジャー」
海賊だ。