第4章 【さん 雛鳥、海に出る】
ゆらり、ゆらりと揺れるのがとっても心地いい。
強すぎず、弱すぎず。適度な暖かさを運ぶ太陽が眠気を誘った。
「ふ……ふわぁぁぁ~」
ぽかり。と欠伸をひとつ。
「懐かしい夢を見たなぁ……」
お父様に出会ってから早数ヶ月。
私がこちらの世界に来てから、もうすぐ1年が経とうとしていた。
あれから色々あって。
何故か大空を舞う鳥たちが好意的だったり、
気まぐれに自然の声が聴こえるようになってたり。
実は元いた世界より重力が軽いみたいで、
身体能力が上がっていたり。
「おとーさま、元気かなぁ」
世界の厳しさを知らなかったぴよぴよの私に、
お父様はこの世界で生き抜く為の術を教えてくれた。
真正面から戦う術ではなく、身を守る術を。
気配を殺し、自然に紛れる術を。
そして、この世界の常識を。
まあ、身を守る術だけとはいえ、
並大抵の相手じゃ私は倒せないどころか膝を付かせることすら出来ないだろうけど。
重力の関係上、身体能力が上がった私は信じられないくらいに強くなったのだ。
たくさんのことを教えてくれたお父様の元を巣立ったのは、ほんの1ヶ月ほど前。
可愛い子には旅させろ、とはよく言ったもので。
『世界をその目で見てくるといい。ついでにお使いもしてきてくれ』
お父様はそう言って私を旅に出した。
ちゃっかりお使いまで頼んでるし。
というわけで私は今。
大海原で航海の真っ最中でございます。