第3章 【に 雛鳥、親鳥と出会う】
腰が抜けた。
そんなの、嘘。
ここは夢の世界。私の寝ている時に見る別の世界。
時間が来ればきっと……
「目覚ましが鳴って、お母さんが起こしに来てくれるんだ。ここは夢、夢なんだから……!」
「……感じているものは全て幻か? 娘、目を逸らそうが変わらぬ。ここは紛れもない現実だ」
呆然と鳳凰を見上げる。
視界がぼやけて、赤が滲んでいく。
嫌だ、泣きたくない。
泣いたら認めてしまう。
泣かないように唇を噛み締めた。
つきりと痛みが走っても、気にならなかった。
「……ぅ……うぅ……」
「血が出ている。人というものは脆く、傷もすぐに治らんだろう? 噛むな」
ふるふる。
首を横に振る。
認めない。
私は認めない……!
「……はぁ。強情な娘よ」
苦笑い。
まさにそんな感情がぴったりな言葉が降ってきた。
次の瞬間、暖かな何かに身体が包まれる。
「哀れな娘。現実を見よ。
さすれば我が力を貸そう。進めるものを見捨てたりはしない」
耐え切れず、喉が嗚咽を漏らして。
1度決壊すればどうなるか、なんて、火を見るより明らかだった。
暖かな翼の中で、暖かな目に見つめられながら。
私はただただ泣き続けた。
それが、
私と鳳凰との。
後に、お父様と呼び慕う様になる彼との出会い。