【ハンターハンター】暗殺者のクオーレ・プーロ【イルミ】
第18章 Odontoglossum -特別な存在-
「…ごめんね。またリリィのこと泣かせちゃった」
イルがいつになくしょぼんとしながら謝るものだから、すぐに首を横に振った。
「自分を大事にするってことは、自分の本当の気持ちを聞くってこと…。痛いものは痛い。嫌なものは嫌。嬉しいものは嬉しい。好きなものは好き。自分に正直になるってこと。自分のことを大事にできれば、自分じゃない誰かのことも大事にできるわ…」
「うん…」
「我慢ばかりしてたら、自分の本当の気持ちがわからなくなって感情が麻痺しちゃうの。本当に大切なものは何か、本当に大事な人は誰なのか…それさえ見失ってしまう…。私もそうだった。でも、フランやベラードたちがいたから大事なものを見失わずに済んだわ」
「うん…」
イルはうつむきながらじっと私の話に耳を傾け、頷き続ける。
「だからもう我慢しないで。一人で堪えないで。私の前だけでいいから…そのまま表に出して。声に出して。最初は怖いかもしれない。でも大丈夫よ。私はずっと、あなたのそばにいるわ…」
「…そんなふうに言われたの初めて」
イルは戸惑いながらも私の手を握り返し、なんだか嬉しそうに微笑む。
「わかった。病院行くから…そうしたらリリィ、泣き止んでくれる?」
「イルったら…私のことばっかり…」
私が思わず笑うと、イルはそんな私を見て安心したように笑った。
「えぇ。もちろんよ」
良かった…。
私が微笑むと、イルも笑う。
私たちは歩いていた方向を変え、病院を目指した。
_