第11章 悪夢再び
研磨side
クロの寝相が悪くて目が覚めた。
飲み物を買おうと自販機の方へ向かうと人影が見える。
"こんな遅くに誰だろ"
そう思いながら、近づいて行ってわかった。
研「夢杏?」
そう俺が名前を呼ぶと"ビク"ッと怯えたように反応した。
いつもなら話かけると顔を見て喋るのに、俯いたまま答える夢杏。
声も少し震えていて、目も合わせようとしない。
いつもと様子が違う夢杏の腕を俺は掴んだ。
ヨロヨロと俺の前を通り過ぎようとしていた夢杏はぐらついて、俺に寄りかかる状態になった。
すぐに夢杏の顔を両手で包み上げさせた。
その表情を見て確信した。
研「夢杏泣いた?」
赤くなった目。気づかない訳がなかった。
何も答えようとしない夢杏を俺は抱きしめながらもう一度聞いた。
夢杏は震える声で答えた。
貴『怖い夢を見た…』
どんな夢から聞くと体が震えも声の震えも増した。
貴『男の人に殴られる夢…』
よっぽど怖い夢だったのだと俺は思った。
研「今は俺がそばに居る」
そう話、俺は少し力を込めて夢杏を抱きしめた。
俺たちは少しソファーに座り違う話をした。
夢杏も少し落ち着いたようで、ウトウトし始める。
ここで寝たら風邪引くと話すと
貴『ん…離れないで…』
寝ぼけながら、俺の服の裾をギュッと握りしめる夢杏。
"守ってあげたい"
そう思った。
出逢ってすぐなのに…
俺は夢杏に惹かれていたんだと確信した。
さっきとは違い、安心しきったような顔で寝る夢杏。
研「俺が守るから。」
寝ている夢杏の頭を撫でながらそう言った。
気がつくと朝になっていて、夢杏に起こされた。
様子はいつも通りに戻っていた。
貴『研磨はやっぱりかっこいいね』
と笑顔で言われる。
ほんと調子が狂う…
嬉しい…
照れたのを隠すように夢杏の頭をポンポンと撫でて、俺はみんなが寝ている大部屋に足早に戻った。
俺はこの時の事を後に後悔する事になる
もっと詳しく話を聞いていれば…
夢杏を守れたのかもしれないと…