第1章 寝癖
=さりとて甘いもの=
信長さまの閨へ入ると、いつになく怖い顔をした信長さまが目の前に立ちはだかった。
「貴様、正直に話せ。今ならば啼かせるだけで許してやる」
「は、はい?一体なんの..」
「俺にシラを切るつもりか?食ったであろう。俺の金平糖を」
「ぇえ!?」
青天の霹靂とはこの事だ。
私は金平糖なんか知らない。
「隠し立てしても無駄だ。数なら毎夜数えておる。さぁ、白状しろ」
...........ぷふっ
毎晩、小さな金平糖を一粒ずつ数えている信長さまを思い浮かべると、可愛らしくて思わず笑みが零れる。
「........何がおかしい」
「クスクスクス....すみません....ンフフッ。一緒に数えませんか?」
「.......いいだろう」
褥の上で隣に座り、巾着袋から出した金平糖を袋へ戻しなから一緒に数え始める。
「....九十八....九十九....やはり一粒足りん」
「100粒ちょうどだったんですね」
「あぁ。.....いや、二つ儲けたな」
「え?....わっ」
急に反転する視界。
信長さま越しに天井が見えた。
ガッと開かれた胸元からは、淡い色の粒が二つ飛び出してしまった。
「やっ...」
信長さまの口内で転がされても、いっこうに溶ける気配がない。それどころかジンジンと甘く痺れてくる。
「貴様のそれはいつまで経っても舐め取れんな。つゆのかかった方も舐めさせろ」
「んん.........っ」
信長さまだ...
信長さまが甘い甘い金平糖だったんだ....
甘い痺れの中でそんなことを考えていたから、信長さまの声が届くことはなかった。
『貴様は、金平糖より甘いのだな』