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第1章 寝癖



 =ひとり寝=



「またその寝方してるんだね」


久しぶりの飲み会で遅くなった私。気がつけば時計の針は真夜中を軽く過ぎていた。タクシーを降り静かに家に入ると、寝ているはずの彼を起こさないようシャワーを済ませ寝室に入る。

遅くなる私を思い、部屋の明かりをいつもよりも明るめにしてくれていたのだろう、薄明かりの中だけど彼の顔も姿もよく見えた。


「光秀さん」


愛しいその人の名を一人、小さく呼んでみる。
もちろん返事はなく、規則的な寝息が聞こえてくる。「ふふふっ」と小さく笑い、彼の寝姿を見つめる。

初めてこの寝姿を見た時には、正直少し驚いた。
抱かれた後、いつものように眠りについたあの日、ふと目覚めてシャワーを浴びて帰ってくると、光秀さんが膝を抱えるように丸くなり眠っていた。胎児を思い出すようなその姿が、いつもの彼の姿からは想像できず少し戸惑った。
戸惑ったまま隣に横になっていると、少し間をおいて彼の手が伸びてきた。そしていつもと同じように抱き締められ、私はまた眠りについた。







そして今夜もまた私のいないベットの上で、光秀さんは一人丸くなり眠っている。何か大切なものをその腕の中で守るように守られるように、丸く小さく包み込むように包まれるように。


あの腕の中は、私の場所。私だけの場所。


そんな彼の姿が愛し過ぎて、にやけた顔がおさまらない。今夜は私が彼を抱きしめて眠りにつこう。愛しい彼をこの腕に抱いて。



起こさないようにベットに入り、丸まって眠る彼を抱きしめる。腕の中から感じる彼の体温、香り、鼓動、寝息。全てが私を包み込み、どうにもならない思いが溢れてくる。


「大好きだよ、光秀さん」


静かに彼の額にキスを落とすと、眠り姫の目覚めのように彼の瞼がゆっくり開かれる。



「おかえり」



ふわりと彼が静かに微笑むから、私は優しいキスを唇に落とす。


「ただいま、私のかわいい人」


またあなたが微笑むから、私はもうひとつキスを落とす。



おやすみなさい、愛しい人








おわり




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