第4章 嘘つきは恋人の始まり
智さんの携帯に翔さんが仕事を終えたと連絡が入って
俺達は“スナック 戯言”を後にした
「ママ…良い人ですね」
「でしょう?
男を見る目は無いんだけどねぇ」
「智さんはママの好きな人、知ってるんですか?」
「知ってる。
カズくんもそのうち嫌でも気付くと思うよ?
気付かないのは想われてる当の本人だけ」
猛アタックしてるのにね、と困った様に笑う
相手の人、相当鈍いんだろうか
「カズくんにもそういう人が現れたら
僕、凄く嬉しいんだけどな
でも翔くんはダメだよ?」
「それは無いです」
「なんで⁉ あんなにカッコ良いのに!
安心したけどなんかちょっと複雑!」
「さぁ、なんででしょうね?」
俺は…俺はさ
翔さんよりもアナタの方が気になるんだよ、智さん
口に出したりはしないけど、
「ほら、行くよ兄貴」
でもアナタとはそういうんじゃなくて
一番近くで見守る弟でいたい
「カズくん、待って!」
振り向いて差し出した手を
“兄貴”が、ギュッと握った