第4章 嘘つきは恋人の始まり
「智さん、」
聞きそびれてしまった事を
今なら聞けるかもしれない
「うん?」
「さっき聞けなかった事、今聞いてもいいですか?」
「何?」
「どうして、翔さんにあんな嘘ついたんですか」
「嘘?
サト、櫻井さんに何の嘘ついたんや」
「ごめんね、ママ」
智さんが申し訳なさそうに当時の事を話し始めると
茂子ママは苦虫を噛み潰したような顔をしていた
「アンタなぁ
慣れてるふりなんかして、そんなハッタリ通用せんのわかるやろ」
「だって、」
『賭けだったんだ』
慣れてるふりをしたって翔さんに受け入れてもらえる保証なんてなかった
寧ろ、嫌われてしまう可能性の方が高かった
それでも
一か八か
ポロッと零した言葉に智さんの積年の想いが溢れていた
「愛してるって言ってくれた
肌も合わせてくれた
でも…不安で、」
心の何処かで
翔さんの自分に対する愛は
親子である潤さんが向けていてくれたソレと同じ愛なんじゃないかって
「与えてくれるけど求めてはもらえない。
そうやってずっと卑屈になってたんだ
今でも…」