第4章 嘘つきは恋人の始まり
「…一つ、聞いてもいいですか?」
「何?」
「智さんはどうして…」
どうして慣れてるフリなんかしたんだよ
そんな、自己卑下するような嘘をどうしてついたんだ
誰とでもそういう事をする奴だ、って思われかねないのに
まだまだガキの俺なんかにはさ
全然わかんねーよ
「あ! 翔くんからメールだ
ふふっ。『了解♡』っと」
なんだよ、デレッとしちゃって
どんだけ好きなんだ
「じゃ、僕達も行こっか」
「あ、はい」
慌てて返事して、底の方に溜まっていたコーンフレークを掻き込んだ
「で、なんだっけ?」
「…いや、いいです」
「そう?」
俺にもいつか分かる時が来るんだろうか
人を好きになったら、いつか
「…ちょ、智さん待って!」
スキップしそうな勢いで店を出る智さんの後を追いかけた
この小さな背中に
この人は何を背負っているんだろうか