第3章 約束
「無事帰還したぞぉぉ!」
法律事務所とは不釣り合いな千賀の喚き声で現実に引き戻される
一体何事だ
「えっ?! ちょっと、大丈夫ですか、千賀さん!」
事務員の慌てた声と、バタン、という物音
何の小芝居が始まったのかと呆れ顔で所長室の扉を開いた
「どうした、千賀」
「所長ぉぉぉ···お、俺頑張ったぁぁ!!」
床に転がる千賀は、よく見れば膝がガクガクと揺れている
「智さんから大量の荷物を預かってマンションに置きに行ったんですよぉ···そしたらエレベーターが点検中で使えなくてぇ···」
「ほう、」
「俺、階段で最上階までぇ···、」
「コンシェルジュはどうした」
「···え?」
「荷物を預ければいいだけの話だろう」
「所長頭イイ!」
「お前が足りないだけだ」
「酷い! 次こそ司法試験合格してやるっ!」
「そうしてもらえると非常に助かるな」
「櫻井所長」
半泣きの千賀を他所に、スマートな男が俺の元に駆け寄った
「今朝の件ですが、奴等、櫻井法律事務所の名前を出した途端態度が豹変しまして
今後二度と彼に関わる事は無いかと」
「よくやった、玉森」
「ありがとうございます」
ほらな、和也
これでお前が死ぬ理由は無くなった
だから言ったろう?
簡単な事だと