第3章 約束
「何かいいことでもありました?」
「いや」
「ホントですかぁ?」
バックミラー越しにチラチラとこちらを伺いながら
パラリーガルの千賀が意味不明な質問を投げかけるから
運転席のシートを軽くつま先で小突いてやると
ハンドルを握ったまま肩をすくめた
「止めてくださいよ、もう!」
「煩い。お前は黙って運転に集中しろ」
「そーゆー事するなら智さんの迎え、行きませんからね!」
「荷物持ちだろ?」
「ぐっ……」
昨夜の事だ
先にベッドに横になった智から、和也の服や生活に必要な物をこの土日で揃えたいと申し出があった
それなら千賀を同行させて、と思ったが
『千賀さん、要らない。
カズくんとデートするんだからっ! 双子コーデで!』
智がソレに興味があるのは知ってた
俺はもちろん、ハイハイって聞き流してたけど
和也と智の双子なら…悪くないかも知れないと思った
胸のポケットに忍ばせたスマホのホーム画像には、さっき送られてきた智と和也の双子コーデの写真
満面の笑みの智と、恥ずかしそうにそっぽを向く和也と
「マジで双子だな…」
「何がですか?」
「煩い」
今度はさっきより強めに
背中のシートに蹴りを入れてやった