第10章 揺れる
『 カズくんだけは...俺の前から消えないで...』
相葉さんのあんな顔、初めて見た
苦しみの中で絞り出すような声も。
消えないで、って言われたってさ
俺はどうすりゃ言い訳? 安易に『 分かりました』とも言えないし
目の届く所に居ろって事?
だとしたら何の為に?
「わっかんないんだよな...」
あの後相葉さんは、ポケットの中で震えたスマホを確認すると
『 行かなきゃ』と言って、最後にヘタクソな笑顔を見せて校舎の中へと戻って行った
生徒会の仕事、まだ残ってんのかな
真新しいスクールバッグの中をゴソゴソを漁り、スマホを取り出して智さんにメッセージを打った
“今日、帰り少し遅くなる”
あんな顔見たらさ、モヤモヤが残って仕方ない
言うだけ言ってパッと居なくなっちゃうし
俺、なんも答えてないし
何よりさ、
「納得行かねぇっつーの」
『消えないで 』の意味、ちゃんと教えろよ
アンタがどうして欲しいのか、ちゃんと聞かせてくれ
「江戸っ子ナメんなよ」
俺はスマホをバッグに仕舞うと、生徒玄関に引き返した
話はまだ、終わっちゃいない