第3章 壊される日常
*
「一日中ここで寝てりゃいいのに」
「遠慮しておきます!」
ぐったりして動けなかった私の体を清めてくれた彼。
乱れた服を整えベッドを出ようとすると、ぎゅっと力強く抱き締められた。
「…忘れるなよ?お前は俺のモンだ…朝も昼も夜も…な」
「っ…」
「他の男に色目なんか遣ったら…」
「遣いませんよ!」
「ふ…そうか」
私の耳元でクスリと笑う彼。
そのまま厭らしく耳の縁に舌を這わせてくる。
「ゃっ…」
(そんな事されたらまた…)
「…もうお前は俺じゃなきゃ満足出来ないはずだ」
「……、」
「俺が欲しくなったらいつでもここへ来い」
「っ…」
そう囁く彼の腕を振り払い、医務室を出る。
まだ火照っている体…
自分の体がどんどん作り替えられているようで怖い。
それなのに…
「………」
ついさっきまでの彼との行為が脳裏に焼き付いて離れない。
甘い香りに逞しい体…私を攻めてきたかと思えば、甘い言葉で惑わせてくる。
「…笹木?」
「…!」
廊下で立ち止まっていると、前から歩いてきた人物に声を掛けられた。
同じ文学部の山下くんだ。
「具合悪いって聞いたけど…平気?」
「っ…う、うん…医務室で休ませてもらったからもう大丈夫!」
「そう?まだ少し顔赤いみたいだけど…」
「ぁっ…」
伸びてきた手が私の額に触れる。
たったそれだけの事で、まだ体が敏感になっている私はあられもない声を出してしまった。
「っ…、笹木…?」
「ご、ごめん!ホントに大丈夫だから!」
恥ずかしくなってその場から走り去る。
(もうやだっ…)
絶対山下くんに変に思われたよね…?
その日私は、彼の顔をまともに見る事が出来なかった。
そんな私に、彼が複雑な想いを抱いているとも知らずに…
*